シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」

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不易流行のドラマ

こんにちは。サロンの吉野です。

今週から毎週月曜日にBS12で、山田太一さん脚本の『早春スケッチブック』が放送されました。

私が脚本家を目指したきっかけになったのは、数多い山田太一さんのドラマを観て、ストーリーの楽しさだけでなく、ジャーナリズムの要素まで伝えることができるんだ!ということに、大きな衝撃を覚えたからです。

皆さんにも観ていただきたいので、詳しい説明はいたしませんが、今の日本と、初オンエアされた1983年の世相を比べてみるだけでも価値があると思いますので、是非ご覧いただければと思います。

 

山田太一の脚本といえば、どうしても思い出されるのは、故、大山勝美さんのことです。

TBSのプロデューサー、ディレクターだった大山さんは、『岸辺のアルバム』や『想い出づくり』、『ふろぞいの林檎たち』といった名作ドラマを山田さんとのコンビで作ってこられたΓドラマのTBS」と言われた時代の大プロデューサーだった方です。

そんな大山さんと、私は一度だけお仕事をご一緒させていただいたことがありました。

当時、私はいつくかのシナリオコンクールを受賞して、有難いことに、色々お声をかけてくださる方があった時期でした。

その中に大山さんがいらっしゃいました。

その当時、大山さんは、TBSを退職されていて、ご自分でドラマの制作会社を立ち上げていらっしゃいました。

私はとある方のご紹介で、実在の日本人女性宇宙飛行士の半生を描くドラマの企画に参加させていただくことになりました。

その企画のプロデューサーが大山さんだったのです。

憧れの山田太一さんとのお仕事ぶりは、よく存じあげていましたので、初対面のときは、本当に緊張しました。

それでも一通り打ち合わせを済まして、ちょったした世間話になったおり、私は大山さんと山田太一が組まれたドラマ『知らない同士』に話題を向けました。

大山さん、山田さんといえば、『岸辺のアルバム』、『ふろぞいの林檎たち』など名作がありますが、何故か私は、『知らない同士』というドラマに話題をふったのです。

いわゆる代表作ではなく、Γ大山さん、山田さん、お二人の功績を色々知っているだよ」と、ちょっと知ったかぶりをしてみたかったので、あえて『知らない同士』という知る人ぞ知る的なドラマのことを持ち出しました。

『知らない同士』は、1972年の作品で、私が小学校5年生のときに観ていたドラマです。

東京に赴任してきたスーパーマーケットの新店長(田宮次郎さん)と、代わりに単身赴任で大阪に転勤になる旧店長(杉浦直樹さん)の奥さん(栗原小巻さん)とのラブロマンスが話の主軸です。

実は杉浦さん演じる旧店長も、大阪で奥さん以外の女性とあやしい関係になっていくのですが、その女性が田宮さん演じる新店長の奥さんだった!という落ちまである楽しい作品でした。

しかし、話はとても爽やかなストーリーであったし、往年のハリウッド映画のような小粋なラブロマンスで、決してドロドロした不倫ものなのではなかったのですが、大山さんは話題をふった私に、Γああ、あれね。あれはさ、スワッピングなんだよ」とおしゃったのです。

一寸、私は言葉を失い、その後、苦笑いしかできなかったのですが、ドラマの内容を知っている私は、大山さん流の照れなのか、はたまた本気でテレビに革命を起こされようとしていたのか、今となっては永遠の謎になってしまったのです。

そんな会話の後に、大山さんは、ドラマについて、こんな言葉をおっしゃいました。

『ドラマは不易流行が大事だ』と。

普遍的なものの中に、その時代の新しさの先端を描く。

私はこの言葉を、今でも心の中で噛み締めながら、創作にあっていきたいと思っています。

サロンの会員の皆さんも、ドラマの『普遍性』と『現代性』については、しっかりと心に刻んでいただきたいと願うばかりです。