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ディベートドラマのお薦め

こんにちは。サロンの吉野です。
昨晩は、今週から始まりましたTBS の連ドラ、『私、定時に帰ります。』を観ました。
働き方改革が叫ばれている中、ドラマの中にジャーナリズムの要素があるものを好む私としては、一応チェックしておかなければならない素材だからです。

この作品は、朱野帰子さんという作家の書かれた原作があります。
第一話を観る限りは、吉高由里子さん演じる、過去に働き過ぎで、心身ともに痛手を負った32歳の女性が、新しい職場で残業ゼロをモットーにしながら、働くことの意味や、自分を大切にする働き方の大事さについて、それぞれ癖のある上司、同僚らに影響を与えていく話のように見えました。
私は原作をまだ読んでいませんでしたので、あくまでも推測になりますが。

私はこのドラマの概要を、あえてホームページなどで事前にチェックしていませんでしたので、観る前までは、もしかしたら、良質なディベートドラマになるのではないか、と密かに期待していました。
しかし、残念ながら期待通りにはならず、吉高さんが周りに影響を与えていく……という構図のドラマになっているようでした。

ただ、ドラマの前半は、同世代にも関わらず、吉高さんとは働くことの価値観が全く違う同僚、シシド・カフカさんのキャラクターに
物凄く期待してしまったのです。
「これは面白いディベートドラマになるかも!」と。
ちょっと訳知りに見えてしまう主人公、吉高さんのキャラクターより、就職氷河期入社の悲哀を持ったシシドさんのキャラに思わず感情移入してしまう自分がいたので、価値観の違う吉高さんとのディベートが面白くなるのではないかと思ったのです。
しかしながら、結末は自分の過去を語って、シシドさんの同僚を励まし、説得していくという、やはり訳知りな吉高さんのままで終わってしまいました。

何故、私がディベートドラマになれば面白い!と思ったのは、過去の作品の映画やドラマに、素晴らしいディベートドラマがあったからです。
2008年に公開された『豚のいた教室』を、皆さんはご覧になったことがありますか?
妻夫木聡さんが演じる小学校教師が、一匹の子豚をつれてきて、担任をしているクラスの6年生たちに向かって、「この豚を飼育して、後で食べようと思う」と提案します。
食べることが前提の飼育なのですが、生徒たちの中には、子豚に情が芽生えている子たちもいて、食べるか、このまま飼育するかで、教室は議論になります。
妻夫木さんの教師としては、その議論こそが狙いで、生あるものを殺して食べることの意味や、命の尊さを学ばせる機会を作っていたのです。
延々と教室での討論、議論はとても見ごたえがありました。

山田太一さんも、過去に『シルバー・シート』というディベートドラマを書かれています。
当時の老人問題に警鐘を鳴らす名作でした。
複数の老人たちが、都電をジャックしてしまい、その解決を任された警備会社員の中年管理職と若手社員。その二人の老人たちとのディベートが話題になりました。
ちなみに若手社員は、今や管理職がはまっている水谷豊さんが演じてました。

私の考え方なのですが、ドラマで一番面白いと思う対立、葛藤は、「正論と正論のぶつかり合い」だと思っています。
あっちの言っていることは正しいけれど、こっちの言ってことも間違ってはいない。
ここに観客、視聴者やそのドラマを観る意味や価値を見出だし、そこに共感や感動が沸き起こるのだと、私は思うのです。

皆さんもシナリオコンクールの発想を考える際に、ディベートドラマというジャンルも、一度選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。