シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」

シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」は、シナリオ公募コンクール受賞のためのノウハウを徹底的に追求していく唯一無二のサークルです。

ストーリージャンルの研究1 ファンタジーとSFを書く際の注意

こんにちは。サロンの吉野です。
今回から定期的にストーリーの特色について、それぞれジャンル別にお話していきたいと思います。
もちろん専門的なジャンルの特質については、その道を研究されている方々にお任せしますが、ここではコンクールの応募原稿にありがちなミスや違和感についてお話していきたいと思います。
初回はファンタジーとSFを書く際に必要な注意についてです。



f:id:sinario_salon:20190513165126j:plain




ファンタジー、SFにこそリアリティーのある人間の感情が必要
最近はコンクールに応募するストーリーのジャンルを選ぶ際に、ファンタジーやSFを書いて出される方が非常に多くなりました。
それだけ映画やテレビドラマで、ファンタジー作品やSF作品が、何の違和感もなく浸透しているからだと思います。


ただ、私はその風潮に若干の違和感を持っています。
特に私が拝見する機会の多いコンクール作品に、それが顕著に現れているからです。
そうした違和感が起きるのは、もしかしたらプロが作っている作品の影響があるのかもしれません。


コンクールに応募される方が、ファンタジー、SF作品というジャンルを選択する際に、一番多いのはタイムスリップものです。
主要登場人物が過去、または未来にタイムスリップするという展開です。
例えば、コンクールの応募作品が、幕末の新撰組で劣等生だった隊士が、現代の防衛大学学生寮にタイプスリップしたら……という内容の話だとします。
発想は広がりがあって、面白そうに思えます。
ただ、そこに出てくる登場人物たちの気持ちが理解できないような書き方をする人が、非常に多いのです。


どういうことか説明します。
この話の展開は、幕末に生きてきた人が、現代にタイプスリップするということです。
当然、タイプスリップする方も、される方も、まずはこの極めつけともいえる非日常的な出来事を信じられなかったり、極端に驚いたり、我を失ったり、すぐに現状を受け入れられなかったり、ストーリーの進行を一時的にストップせざるを得ないような戸惑いが起きるはずです。
皆さんもいかがでしょうか?
もしも身近に幕末からタイムスリップした人が突然現れたら……。
まともにすぐに対応できますか?


ところがコンクールに出してくる人の多くが、驚いたというちょっとしたリアクションの後、すぐにこの異常な現状を受け入れてしまい、さっさとストーリーを進行させてしまうのです。
これは生きている人間の気持ちからすれば、全く持って理解ができない心情です。
要するに、話自体が面白いのだから、さっさと物語を全部を見せてしまおうということなのです。


私はファンタジーやSF作品こそ、リアリティーのある生きた人間の感情を描かなければならないと思っています。
いつもお話していることですが、日常が平凡だから、非日常的な出来事が起こると、そこにいる人間の感情が揺れ動いて、ドラマが生まれるのだと思うのです。
ファンタジーやSFは、初めから展開が非日常的なところからスタートするのですから、それを受け入れる人間まで、日常では感じない心情に走ってしまうと、話全体が「嘘臭い……」としか思えなくなってしまいます。
嘘臭い話には、当然コンクール審査での評価は得られません。
例え、どんなに設定が面白いとしてでもです。
ただ、問題なのは、このような人間不在のシナリオが、コンクール応募作品に限らず、プロが作っている作品の中にも、相当数あるという点です。
良いにつけ悪いにつけ、素人はプロの真似をします。
その点は、プロの方々にもご理解いただけると幸甚です。


おそらくこうした現象は、アマチュアもプロも、そしてそれを受けとる観客、視聴者も、エンターテイメントにおける超常現象に、悪い意味で慣れてしまっていることが原因だと、私は思いました。



f:id:sinario_salon:20190513165146j:plain