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長く愛され続ける作品の条件

こんにちは。サロンの吉野です。
明日から山崎豊子原作の『白い巨塔』が、5夜連続でテレビ朝日で放送されます。
主人公の財前五郎役は、V6の岡田准一さんです。


白い巨塔』と言えば、五十代の私としては、亡くなった田宮二郎さん演じる財前五郎が、まず頭に浮かびます。
1966年の映画版を初め、1978年の連続テレビドラマシリーズでも主人公の財前役を務められた田宮さんは、まさにはまり役中のはまり役としてもよいような存在でした。
意外なんですが、財前五郎役を務めた役者さんは、田宮さんの他に四人もいらっしゃったようです。
1966年の映画での田宮さん。その後、テレビドラマとして佐藤慶さん。再び田宮二郎さん。村上弘明さん。唐沢寿明さん、そして今回の岡田准一さん。


私は田宮さん以外ですと、唐沢寿明さんぐらいしか記憶に残っていませんでしたので、本当に意外です。
2003年に連続テレビドラマシリーズで財前を演じられた唐沢さんも、田宮さんとは違った財前像を作られていて、素晴らしいと思いました。
当時、唐沢さんは財前を演じる上で、どうしても田宮二郎さんのイメージが抜けない難しい役に、相当な覚悟で臨んだそうです。
今回の岡田さんは、唐沢財前の成功もあってか、プレッシャーを感じることなく、だいぶ楽に財前役を演じることができるのではないか?と期待しています。


繰り返しリメイクされる名作
白い巨塔』は、山崎豊子さんが原作を発表されてから、ちょうど50年になるそうです。
山崎豊子さんといえば、私の脚本の師匠でした故・清水曙美先生が、山崎さん原作の『女系家族』という連ドラを書かれたときに、ご自宅がある大阪堺市へご挨拶に行かれたときのエピソードが思い出されます。
清水先生も同行されたプロデューサーの方も、昭和の文豪といっても良い山崎さんに、ドラマ化のご挨拶へ伺うのは、相当緊張されたそうです。
挙げ句、山崎さんからドラマ化への厳しい要求があったらしく、滞在時は生きた心地がしなかったようでした。
ただ、山崎さんの要求は原作者として当然の要求であり、そういった要求があるからこそ、山崎さんは作家として色褪せないものがあるんだ、というようなことを清水先生がおっしゃっていたように思います。


話は再び『白い巨塔』に移ります。
50年前の作品のリメイクなので、当然現代に合わせた設定に変更しなければならないことがあります。
例えば、カルテも、現代ではすべて電子カルテになってしまいました。
また、原作の中では、出てくる大学教授は全て男性でしたが、今回の岡田版では女性教授も出てくるようです。
病気の告知シーンも、以前は患者本人には伝えないケースがほとんどだったのに、現代では本人への告知が主流です。
田宮版では、田宮さんを初め、医師も医局で堂々煙草を吸っていましたが、現代ではもちろん病院内全面禁煙です。
このように原作から50年も経ってしまうと、たくさんの設定変更をしなければならないのですが、それでも尚、『白い巨塔』はリメイクされ続けるのでしょうか。


人間ドラマの普遍性
山崎豊子さんだけではなく、松本清張さんもそうですが、昭和の作家の作品を、何故令和の時代になってもリメイクされ続けるのでしょうか?
その答えは一つだと思います。
それは山崎さんも松本清張さんも、いつになっても変わらない人間の気持ち、感情をすべての作品に込めれていらっしゃるからです。
それが人間ドラマというものではないでしょうか。
先ほど述べましたように、『白い巨塔』で描かれる医療というものは絶えず進歩しています。
現代性からすれば、50年前の作品をリメイクする価値はありません。
しかし、「現代性」よりも何よりも、そこにいる人間の感情の「普遍性」に焦点を当て続けているので、『白い巨塔』は、いつの時代になっても作り続けられていくのだと思います。


私もそうですが、皆さんも、たった一本でもよいので、いつの時代でも愛され続ける作品を創っていただきたいと思います。



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