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結局、ドラマとは対立と葛藤なのである

こんにちは。サロンの吉野です。
昨晩、『白い巨塔』の最終回を観ました。
放送前の評判及び放送後の1、2回を見た限りでは、キャスティングや従来の過去作品との尺の違い等の問題で、私自身も、今回の作品に関しては、若干の違和感を感じていましたが、終わってみれば、やはり誰が演じても名作は名作であるということを、改めて感じた5日間でした。
岡田さんを初めとする俳優陣の方は、本当に素晴らしかったです。


白い巨塔』に見る対立構図の鮮明さ
白い巨塔』という作品が、何故名作と言われるのか?
そして、何度映像化されていても、常に面白く観られるのか?
それはもちろん原作の素晴らしさにあるのは間違いないのですが、映像化されるときのドラマとしての価値を語る際に、その対立構図の鮮明さが、まず頭に浮かびます。
どういうことかと申し上げますと、登場人物間の対立のつけ方、あり方が、心憎いほど上手く出来ているのです。


1.財前と里見の対立
この物語のテーマであります「医療とは何か? 医師はどうあるべきか?」を象徴する二人の対立構図です。
壮大な物語のメインテーマに相応しい主人公と副主人公の対立です。

 
2.花森ケイ子と財前杏子の対立
財前五郎の愛人である花森ケイ子と、夫人である財前杏子の対立です。 
愛人と正妻というわかりやすいほどわかりやすい対立構図ですが、ある意味普遍的な女性の対立を入れることで、サブストーリーを飽きさせない効果があります。


3.東佐枝子と里見三千代の対立 
里見医師に仄かな恋愛感情を抱いている東教授の娘、佐枝子と、里見の妻、三千代の対立です。
ここは花森ケイ子と財前杏子とは、また違った一人の男性をめぐる対立構図です。
元々佐枝子と里見には、男女関係はありませんし、里見にも妻、三千代を裏切って佐枝子とどうにかなるつもりはありません。
ただ、実は花森ケイ子、財前杏子以上に激しい駆け引き、感情の縺れ合いがある二人でもあるのです。
それが財前の裁判での里見のスタンスをめぐる考え方です。
本来、里見を信頼しきっている三千代ですので、夫の裁判への考え方に賛同するのが当然なのに、物語では反対の立場を取ります。
それは夫の大学病院での出世を慮ってのことだけなのか……?
たぶんそれは違って、里見の裁判でのスタンスを支援している佐枝子への当て付けの意味がかなり強いのだと思います。
この二人の人間の性に近い対立も、サブストーリーを程よく盛り上げています。


4.関口弁護士と国平弁護士の対立
原告側の弁護士と被原告側の弁護士の対立なので、当たり前といえば当たり前の対立構図ですが、今回の作品では、元々同じ弁護士事務所に勤めていたという設定を入れ、二人の弁護士としての考え方の違いまで触れていました。
まさに財前と里見の対立を補足支援するような形の対立構図です。



このように主人公、副主人公に限らずに、重層的に対立構図を入れていることが、普遍的な物語の面白さに繋がっているのだと思います。



物語を盛り上げる最大の葛藤
一見ピカレスクヒーローにも見える財前ですが、故郷の母親とのやり取りや花森ケイ子とのプライベートで、自分の人生での葛藤を表現します。
しかし、この物語の最大の葛藤軸を作っているものといえば、財前の裁判のキーを握っている柳原医師だと思います。
彼の葛藤が、ある意味この物語のテーマを象徴していて、そこに翻弄されていく人物として主人公、副主人公がいると思うのです。
最大の葛藤軸を主人公、副主人公に背負わせないところにも、このドラマのセンスを感じます。


ドラマとは対立と葛藤だとよく言われます。
しかし、その意味合いを本当に解っている方は少ないように思います。
私自身も、何度も観ていたはずの『白い巨塔』を再度見終わって、遅まきながら、その真の意味に気づきました。


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