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『パラサイト 半地下の家族』に見るエンターテイメントと社会性の共存

こんにちは。サロンの吉野です。
昨日はゼミがありました。

韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、第92回アカデミー賞で作品賞を初め、最多4部門を受賞したことは記憶に新しい出来事です。
監督ポン・ジュノの創る映画は、今回、栄冠を掴んだ『パラサイト 』だけに限らず、理屈無しで観客を楽しませようとするエンターテイメント性の非常に高いものが圧倒的に多い作品ばかりです。
グエムル 漢江の怪物』などは、小さな子供が観ても、最後まで飽きさせないような工夫を凝らした作品でした。

一方、彼の作品には、現代社会(主に韓国の)を風刺した、いわゆる「社会性」の側面も併せ持っています。
『パラサイト』では格差社会を鋭くえぐり出し、『グエムル』では、ベトナム戦争枯葉剤を巻いた米軍の非道を鋭く風刺しました。
よく私が申し上げていることですが、評価される作品は、ただ単に面白ければ良いというエンターテイメントの要素ばかりを追求しても駄目ですし、小難しいテーマ性やメッセージ性ばかりを追い求めるのも駄目だと思うのです。
このエンターテイメント性と社会性を常に共存させるポン・ジュノの作品が、アカデミー賞を取るのは、至極当然のことだと、私は思いました。

昨日のゼミでは、このエンターテイメント性と社会性について考えさせる発表がありました。
いつものように発表内容の詳細については申し上げられませんが、主人公がいわゆる多重人格を持っているという設定でした。
発表された内容は、主人公の精神世界を、非常にアイデア溢れる構造として考えられていて、「うん、これは面白いな」と素直に頷けるものでした。
ただ、「面白いな」だけで終わってしまう危険性もある発表でした。
それは発表の内容が、主人公の精神世界の構造がメインになっていて、どうしてこの主人公の多重人格が問題になっているのか?という、社会(他人)が関心を持つ、いわゆる「社会性」が現時点では語られていない点にありました。
かつてベストセラーになった『24人のビリー・ミリガン』という多重人格者を描いた小説がありましたが、これは読者がビリー・ミリガンという実在の個人の精神世界、構造を知りたいという動機で本を購入したわけではなく、世間を震撼させた強盗強姦事件の犯人、ビリー・ミリガンという人物は、実は多重人格だった!ということで、世間=読者(他人)は興味を持ったのです。
つまり読者が興味を覚えるのは、多重人格者の精神世界ではなく、強盗強姦を犯した犯人が実は多重人格者だった……という点なのです。
多重人格者の詳細から考えるのではなく、何かをやった人が、実は多重人格だった…という視点で考えていくのが筋だと思うのです。
社会(他人)は、人のことなど気にしません。例えその人が多重人格者だとしても。
社会(他人)が気になるのは、その人は社会に対して何をした人なのか?なのです。
その点をしっかりと考えていただき、より面白くて社会性のある作品に仕上げいただきたいと思います。



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