シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」

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ストーリージャンルの研究1 ファンタジーとSFを書く際の注意

こんにちは。サロンの吉野です。
今回から定期的にストーリーの特色について、それぞれジャンル別にお話していきたいと思います。
もちろん専門的なジャンルの特質については、その道を研究されている方々にお任せしますが、ここではコンクールの応募原稿にありがちなミスや違和感についてお話していきたいと思います。
初回はファンタジーとSFを書く際に必要な注意についてです。



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ファンタジー、SFにこそリアリティーのある人間の感情が必要
最近はコンクールに応募するストーリーのジャンルを選ぶ際に、ファンタジーやSFを書いて出される方が非常に多くなりました。
それだけ映画やテレビドラマで、ファンタジー作品やSF作品が、何の違和感もなく浸透しているからだと思います。


ただ、私はその風潮に若干の違和感を持っています。
特に私が拝見する機会の多いコンクール作品に、それが顕著に現れているからです。
そうした違和感が起きるのは、もしかしたらプロが作っている作品の影響があるのかもしれません。


コンクールに応募される方が、ファンタジー、SF作品というジャンルを選択する際に、一番多いのはタイムスリップものです。
主要登場人物が過去、または未来にタイムスリップするという展開です。
例えば、コンクールの応募作品が、幕末の新撰組で劣等生だった隊士が、現代の防衛大学学生寮にタイプスリップしたら……という内容の話だとします。
発想は広がりがあって、面白そうに思えます。
ただ、そこに出てくる登場人物たちの気持ちが理解できないような書き方をする人が、非常に多いのです。


どういうことか説明します。
この話の展開は、幕末に生きてきた人が、現代にタイプスリップするということです。
当然、タイプスリップする方も、される方も、まずはこの極めつけともいえる非日常的な出来事を信じられなかったり、極端に驚いたり、我を失ったり、すぐに現状を受け入れられなかったり、ストーリーの進行を一時的にストップせざるを得ないような戸惑いが起きるはずです。
皆さんもいかがでしょうか?
もしも身近に幕末からタイムスリップした人が突然現れたら……。
まともにすぐに対応できますか?


ところがコンクールに出してくる人の多くが、驚いたというちょっとしたリアクションの後、すぐにこの異常な現状を受け入れてしまい、さっさとストーリーを進行させてしまうのです。
これは生きている人間の気持ちからすれば、全く持って理解ができない心情です。
要するに、話自体が面白いのだから、さっさと物語を全部を見せてしまおうということなのです。


私はファンタジーやSF作品こそ、リアリティーのある生きた人間の感情を描かなければならないと思っています。
いつもお話していることですが、日常が平凡だから、非日常的な出来事が起こると、そこにいる人間の感情が揺れ動いて、ドラマが生まれるのだと思うのです。
ファンタジーやSFは、初めから展開が非日常的なところからスタートするのですから、それを受け入れる人間まで、日常では感じない心情に走ってしまうと、話全体が「嘘臭い……」としか思えなくなってしまいます。
嘘臭い話には、当然コンクール審査での評価は得られません。
例え、どんなに設定が面白いとしてでもです。
ただ、問題なのは、このような人間不在のシナリオが、コンクール応募作品に限らず、プロが作っている作品の中にも、相当数あるという点です。
良いにつけ悪いにつけ、素人はプロの真似をします。
その点は、プロの方々にもご理解いただけると幸甚です。


おそらくこうした現象は、アマチュアもプロも、そしてそれを受けとる観客、視聴者も、エンターテイメントにおける超常現象に、悪い意味で慣れてしまっていることが原因だと、私は思いました。



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ラジオドラマでの場面転換と独り言2

こんにちは。サロンの吉野です。
前回に続きまして、ラジオドラマを書く際に陥りやすい点について、お話をしていきたいと思います。
今回は「主人公の独り言」についてです。



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ラジオドラマでの主人公の独り言について
この主人公の独り言の扱い方も、ラジオドラマを書き始めて間もない頃に、初心者の方が陥りやすい失敗の原因になります。


ラジオドラマは、映像シナリオではとかく敬遠されがちなモノローグを使うケースが、非常に多くなります。
状況説明だけのために、モノローグを使うのは、映像シナリオと同様で、あまりやってはいけないことですが、絵が見えないラジオでは、登場人物の心情、感情などの心理描写をするのには、絶対的に必要な道具になります。
そのため皆さんラジオを書かれてときに、必ずといってよいほどモノローグを使われます。
そこで問題になってくるのは、「主人公のモノローグ」と「主人公の独り言」の区別になります。


何度も言いますように、ラジオドラマでは絵(映像)がありませんので、登場人物、特に主人公の心情、感情などの心理描写をするとき、モノローグを多様します。
それと同様、絵(映像)がないので、登場人物の心情を表す仕草、表情も見せることができませんから、その代用として、登場人物、特に主人公の「独り言」を使ってしまうのです。


主人公のモノローグと主人公の独り言を、同じ場面で使ってしまったらどうなるか……。
もうお分かりですよね。
主人公のモノローグなんだか、独り言なんだか、全く区別がつかなくなってしまいます。


書いているご本人は、分けて考えているつもりでも、読んでいる者(審査員)には、全く区別がつかないのです。
これは大きな損になります。


解決策としては、まず登場人物、特に主人公には「独り言」を言わせない。
これが一番です。
二番目としては、主人公がモノローグを語っているときは、その場面に主人公を独りにさせない。
これが大事です。
主人公が独りでいる場面で、モノローグを入れてしまうと、いざドラマが動き出したときに、ついつい「独り言」を言ってしまう。
そんなパターンがとても多いのです。
5、6本もラジオドラマを書かれていれば、まずそんな失敗を犯す方は少ないのですが、1、2本くらいしか書かれていない初心者の方の多くは、測ったように同じ失敗を犯してしまいます。



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とにかくラジオドラマを本格的に書きたいと思われている方は、映像シナリオを勉強されてきた経験は頭に入れず、全く新しいことにチャレンジしているんだ!という気持ちで、ラジオの勉強に取り組んでいただきたいと思います。

ラジオドラマでの場面転換と独り言1

こんにちは。サロンの吉野です。
サロンの会員の方々にも、ラジオドラマを本格的に書いていきたいと思われている方は、少なくありません。
ただ、皆さん映像シナリオを書く勉強からスタートされていて、その癖から抜け出せていない面があります。
中でも、皆さん共通に苦労されているのは、場面転換の仕方と主人公の独り言の処理についてです。



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ラジオドラマでの場面転換
映像シナリオならば、○=シーンナンバー(柱とも呼ばれています)がありますので、その芝居がどこで行われているのか、一目瞭然でわかるようになっています。
ところがラジオドラマのシナリオでは、○がない、つまりシーンという概念が元々ないのです。
ただ、シーンは無くても、主人公を初めとする登場人物が、どこで芝居をしているのかは、明らかにしなければなりません。


例えば、先日拝読したラジオドラマのコンクールに応募する原稿に、こんなシチュエーションがありました。


主人公(男性)は会社勤めをしています。
仕事が終わって、自宅に帰りたいのですが、会社から自宅への場面転換をどうしたら良いのか?
というのが、このシチュエーションになります。
どうしたら良いでしょうか?


作者は、インターホンの「音」=SEだけで処理されようとしました。
自宅のドアにあるインターホンだと……。
しかし、インターホンは自宅だけにあるものでありません。
よその家かもしれませんし、自宅ではなく、恋人のマンションのインターホンかもしれません。
それだけで、主人公の自宅だということを特定するのは難しいでしょう。
どうことをお話したいかというと、ラジオドラマでの場面転換は、単純なSEだけでは、描写不足になってしまう可能性があるということです。
自宅を象徴する「音」を考えるのは言うまでもありませんが、その音プラス登場人物のセリフやモノローグで、場面が変わっていることを補足しなければならないのです。
私が作者に、まずは主人公とその自宅の雰囲気のする「音」を考えるようにアドバイスしました。
例えば、主人公は母親を暮らしているのですが、家に帰る(ここはインターホンのSEでも構いません)と、誰も空けてくれず、主人公は自分の鍵で空けます(ここもSEと主人公のセリフで処理できます)。
家に上がる(ここもSE処理)と、テレビの大音量の歌番組の音が聞こえてきます。
そこに母親らしい女性の声が、番組で唄っている歌手の歌声に合わせて口ずさんでいます。
そこで主人公が母親らしい人物に「なんだ、母さん、また~の歌聞いてるのかよ」
みたいなセリフのやり取りがあると、主人公とその女性の関係もわかりますし、母親の趣味などキャラクターも同時に紹介できたりするのです。
このように、ラジオドラマでは絵が見えないということが前提にななりますので、SE(音響効果)だけではなく、セリフ、あるいはモノローグを使って、複合的な描写をしていかなければならないのです。


次回もラジオドラマを書く際に、陥りやすい点、主人公の独り言について、お話していきたいと思います。