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表現の幅が広がるラジオドラマ 前編

こんにちは。サロンの吉野です。
いよいよシナリオコンクール本番のシーズンがやってきましたが、秋から冬にかけて、主要なものがあるラジオドラマのコンクールにも目を向けていただきたいと思いまして、今回はラジオドラマの特性とコンクールで受賞できるモチーフの見つけ方についてお話していきたいと思います。


皆さんの中には、映像シナリオを学んできたのだけれど、何となくしっくりこない……と思っている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
例えば、作品世界がどちらかというと現実離れしていて、実写の映像媒体では表現しづらいもの。
あるいは、映像に出来ないことはないが、それを創ろうと思ったら物凄くお金がかかりそうで、コンクールの出すことが憚れてしまうもの……。
このような作品傾向がある方にお薦めしたいのが、ラジオドラマなのです。
ラジオドラマの書式(書き方)については、この記事では詳しくお話できませんが、機会があれば、夏頃に集中特別講座のようなものをやりたいと思っています。
ただ、書式の中で一つだけ、今回の記事でお話ししなければならないのは、『ラジオドラマにはシーンがない』ということです。
それは、これから述べますラジオドラマの特性とそのモチーフにも関連することなので、ラジオを真剣に勉強したいと考えている方は、よくお読みいただければと思います。


ラジオドラマの特性
倉本聰さんがおっしゃっていたことに、こんな言葉があります。
『テレビドラマは聴くもの。ラジオドラマは観るもの』
どういうことをおっしゃりたかったかというと、ラジオドラマは、映像作品以上に、映像的な観点を持たなければならない……ということだと思います。
それと、映像作品は客観的表現が中心になりますが、それに対してラジオドラマは、極めて主観的表現の芸術であるということです。
つまり作者はその作品の主人公一人の想いを代弁して訴えかける。
つまり主人公の想いを一つの作品として、リスナーに語りかけるのがラジオドラマの大きな役割だと思うのです。
それを描くために、ラジオドラマでは主人公の独白、つまりモノローグを使うケースが非常に多くなります。
そういった特性がありますので、
ラジオドラマは、私小説に似ている部分があると、私は思うのです。
それでは、具体的なラジオドラマの特性についてお話をしていきたいます。


1.登場人物は多くても三人
ラジオドラマのコンクールでは、400字詰原稿用紙50枚から55枚、1時間弱の内容を書くものが多いと思います。
映像シナリオのコンクールの場合、1時間もので登場人物の数は、多くても5、6人ということは、いつも申し上げているのですが、ラジオの場合は、さらにそれよりも少なく、せいぜい3人ぐらいじゃないかと思っています。
それは先ほども申し上げたように、ラジオは主人公一人の想いを描く極めて主観的な表現であることと、絵=映像のない状況では多人数を出せないという媒体の特性の問題があるからです。
もちろん熟達のラジオ作家であれば、もう少し多い人数でもきちんと処理できますが、素人=コンクールに応募される方は、出来る限り人数は出せない方向で構想を練るのが無難だと思います。


2.同性同世代は出さない
ラジオドラマの情報は「音」しかありません。
演じる俳優さんのセリフも「音」になります。
そんな状況で、同じぐらいの年の人、しかも同じぐらいの世代の人が何人も出てきたら、聴いている方(リスナー)は、その声=音を判別できるでしょうか?
もちろん予め俳優さんが決まっているプロの現場は例外になることはありますが、俳優が決まっていないコンクールの場合は、避けたほうが無難です。
それが原因で落選するようなことがあれば、非常にもったいない話になります。


3.一つの作品を通して、印象的な音、色、匂い、手触りなどを全編に貫く
先ほども申し上げたように、ラジオドラマの情報は音しかないのです。
つまりリスナーにとっては、聴覚だけが頼りになります。
しかし、ラジオドラマも総合芸術の一つであることは、疑う余地がありません。
そこで聴覚しかない部分を、その他の五感、視覚、臭覚、触覚、味覚を刺激する要素を、シナリオの中に取り入れる必要があるのです。
例えば、全編を通して、「赤」という色をリスナーに印象づけたかったら、赤の入ったものやことを、セリフやモノローグで聴覚として表現するのです。
それをやることで、非常に視覚的な効果をリスナーに与えることができます。


4.主人公は人間ではなくても良い
ラジオドラマは非常に制約の少ない媒体です。
ですので、ドラマだからといって、主人公が人間である必要はないのです。
例えば、動物が主人公でも構いません。もちろん植物でもOKです。
昆虫でも鳥でも構いません。
生き物ではない机や椅子が主人公でも構わないのです。
要するに、あらゆるものを「擬人化」して表現できる芸術なのです。
もちろん椅子が主人公であっても、演じる声優さんは人間ですが……。
人間が演じてしまうと、逆にテーマを伝えきれない場合などは、擬人化して表現することがお勧めです。


5.舞台は現代でも未来でも良い
空間的、時間的な制約がないのも、ラジオドラマの特性です。
描く時代は現代でも良いし、未来でも良いし、過去でも大丈夫です。
舞台は日本でも良いし、外国でも良いし、宇宙空間でも何でもOKです。
映像のように、予算的な問題も起きません。
但し、どんな時代、空間であっても、『現代日本で通用するテーマを訴える!』ことだけはしていただきたいと思います。
聴いているリスナーは、現代の日本に生きている人間ですので。


次回後半は、ラジオドラマのコンクールで受賞できるモチーフの見つけ方についてお話します。



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