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2019年7月クール連ドラ鑑賞日記2 連ドラの大半が漫画を原作にしていることの功罪

こんにちは。サロンの吉野です。
7月クールの連ドラ、相変わらず漫画を原作にした作品が多いなあと思います。
先日記事にした『監察医 朝顔』もそうですし、火曜日に始まったTBS『heaven ご苦楽レストラン』、昨晩からの日テレ『偽装不倫』など、ほとんど……というと語弊があるかもしれませんが、相当数にのぼるのは間違いありません。
漫画を原作にするという現象は今に始まったことではなく、テレビドラマ黎明期よりあったことです。
例えば、皆さんは『鉄腕アトム』の実写版をご覧になったことはありますか?
鉄人28号』の実写版はいかがでしょうか?
私もリアルタイムでは観たことがないくらい、テレビドラマ初期の作品です。
ただ、何かの機会に上記両作品を観たとき、お世辞にも「良く出来ているなあ」とは言えませんでした。
ただ単に人気漫画、アニメのヒーローを生身の人間が演じているだけだと……。
このように、漫画を原作にしているテレビドラマの初期は、ヒーローものの実写版でした。
その後も『柔道一直線』や『サインはV』など、東京オリンピックを契機に、スポコンと呼ばれる漫画の実写版ができるようになります。
しかし、それらはいずれも少年少女向け、悪く言い方をすれば子供向けだったのです。
ところが漫画は子供向けのものではなくなる時代がやって来ます。
1980年ぐらいから『ビックコミックスピッツ』や『モーニング』など、青年漫画雑誌が刊行されるようになると、大人の女性をターゲットにした漫画雑誌も多くなりました。
現在のテレビドラマの主流は、そうした女性向けの漫画を中心しているように見えます。
それでは何故、最近のテレビドラマでは、漫画を原作にしているケースが多いのでしょうか。


漫画を原作にする「功」の部分
漫画を原作にする功罪についてお話しようと思っていますので、まずは良い面、「功」の部分からお話していきたいと思います。


1.予め筋があるのでプロットに困ることがない
ドラマ制作者が一番頭を悩ませるのは、話の筋(ストーリー)を作ることです。
漫画や小説など原作があれば、筋は最初から必ずありますので、毎回のプロット作りに悩むことがないのです。
想像ですが、おそらく過去、脚本家、シナリオライターに筋作りを任せていた時代は、中々原稿があがってこないことに、プロデューサーなどは相当頭の悩ませていたのではないかと思います。
こんな人たちに任せてはいられない……という制作者の考えが、予めストーリーがある原作偏重に繋がったのだと思います。


2.結末を都合の良いように変えられる
1とは真逆の理屈のようですが、原作として使っている漫画作品は、現在も連載中のものが比較的多いといえます
つまり本当の意味での結末が決まっていない場合があるのです。
その点、俳優サイドの事情などで、「このような役はできない……」というような条件を出されたときに、話の筋をある程度都合良く変えられる利点があります。
小説の場合は、まず連載中のものの採用はありませんので、漫画ならではの利点かと思います。


3.イメージキャスティングがし易い
漫画には「絵」がありますので、キャラクターのイメージのある俳優を選び易いという利点があります。


以下、漫画を原作にする「罪」について述べます。


漫画を原作にする「罪」の部分


1.原作のイメージを崩してしまう可能性がある
「功」の部分とは対称的に、漫画を原作にすると、キャスティングなどのイメージを逆に崩してしまう危険をはらみます。
それが顕著になれば、ドラマだけではなく、原作の漫画自体にとって、大きな痛手になることも考えられます。


2.漫画のキャラクターは、そもそも人間ではない
テレビドラマは、人間が芝居をするのが基本です。
漫画に登場してくるキャラクターは、「人間っぽい」キャラクターもいますが、基本的に二次元の世界の住人です。
したがって、生身の人間とは多かれ少なかれ違う存在だといえます。
最近のドラマで、特に気になるのは、「こういうこと、普通人間はしないだろう……」というようなことを、平気で生身の人間である役者に強いている点です。
必然的に役者さんの芝居が大げさになり、いわゆるリアリティーが皆無のキャラクターになることが、当たり前のようになります。
一部の人は、それを面白いと感じるのかもしれませんが、同じような人数の人は、すぐにチャネルを変えてしまう理由になるのではないでしょうか。
漫画チックなことがすべて悪いとは思いませんが、どこの局も漫画っぽいドラマになってしまうのは、やはり淋しさがあります。


昨今、色々な面で「二極化」していると言われます。
例えば、制作者側が「60歳以上の視聴者はこういうドラマを……」とか、「漫画世代の若い人は漫画が原作で……」と、はっきりと仕切ることもないのではないかと思うのです。
かつてお茶の間にテレビがあった時代には、幅広い内容のドラマが創られていたように思います。
「二極化」が社会問題になっている今だからこそ、もう少し幅広い世代が観られるドラマがあっても良いのではないかと思うこの頃です。



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