シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」

シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」は、シナリオ公募コンクール受賞のためのノウハウを徹底的に追求していく唯一無二のサークルです。

短編小説公募について考える 副主人公だった人間が「主人公に化ける」連作ものの強み

今晩は。サロンの吉野です。
創作交流サークルサロンは、シナリオコンクールだけではなく、小説、漫画原作、戯曲、ラジオドラマなど、文字創作全般に渡って、会員の皆さんのご要望にお応えできる集団でありたいと思っています。
実際、昨年から今年にかけて、戯曲、漫画原作の公募にチャレンジされて、受賞までに至った方もいらっしゃいます。  
今年後半は、小説、ラジオドラマでも、実績を残せるように、ゼミナール等を、さらに充実させていただく所存です。
今回は小説について、少しお話させていきたいと思います。


プロの小説家になるための短編小説公募攻略
小説家を目指されている人は、取っ掛かりとして、短編小説(およそ400字詰め原稿用紙30枚~100枚程度)の公募からチャレンジしていく方が多いと思います。
ただ、長編小説の公募を受賞された人に比べて、プロの小説家になれる可能性はやや低いのも事実です。
それでも小説家になりたい! ただ、すぐに長編は書けない……と思われている人は、とりあえず連作になり得る題材、素材に取り組んでみてはいかがでしょうか。
詳しくは以下に述べます。


単行本になることを想定しないと、プロ作家デビューは厳しい
短編の公募に出すのは良いのですが、100枚程度の小説では、もちろん「本」にはなりません。
仮に短編として質の高いものを書いて、審査員から評価をもらい受賞したとします。
しかし、同じような質の高い短編を何本も発表できるかというと、それは相当力のある人にしか出来ない芸当です。
編集者のほうも、受賞した人がそれだけの力がある人だと確信するのには、それなりの覚悟と時間が必要なのではないでしょうか。
手っ取り早く、短編小説公募で受賞し、それを単行本にする方法は、「連作になる可能性」を示すことだと思います。


伊良部シリーズを参考にする
奥田英郎さんが書かれた「精神科医 伊良部一郎」シリーズがあります。 
イン・ザ・プール』や『空中ブランコ』という単行本は、伊良部と、その病院にやって来る患者との話を一話完結で描いていく、いわゆる短編集です。
設定はちょった変わった心の悩みを持つ患者が、伊良部の病院を見つけ、その飛んでもない診療に辟易しながも、いつの間にか伊良部に癒されてしまう……という内容です。
大元の設定はどの話でも変わらず、レギュラーである伊良部や周りの看護師などのキャラクターも固定されています。
変わるのは、毎回やって来る患者と、その症状だけです。
このように主人公を初めとするレギュラーのキャラクターと大元の設定を固定していけば、いわゆる副主人公を毎回変えるだけで、複数の短編が出来上がり、それを連作短編集として、単行本にすることが可能です。
例えば、湊かなえさんの『告白』という単行本は、応募枚数80枚の短編小説公募「小説推理新人賞」で受賞した『聖職者』が元になっています。
『聖職者』のレギュラーキャラクターそれぞれのエピソードを短編にして、一冊の単行本にした作品でした。
湊さんが当初から連作を意識されていたかどうかはわかりませんが、連作になり得る設定を作っていたことは確かです。


魅力的な主人公のキャラクターをまずは創り、不特定多数の副主人公候補を考えていく
奥田英郎さんの「伊良部シリーズ」では、一見主人公は伊良部のように見えますが、一話一話を読んでいくと、実は主人公はやって来る患者であることがわかります。
以前の記事でお話したことがあるのですが、泰然自若とした主人公の場合、成長変化するのは、その主人公と関わっていく副主人公である、と述べました。
伊良部シリーズも同様で、単行本としての主人公は伊良部ですが、一話一話で成長変化するのは患者の方になり、その話だけを見れば、主人公は患者なのです。
副主人公が「主人公に化ける」というのは、このことになります。


このように連作を意識した短編小説を書いて受賞すれば、単行本として世に出すことができるかもしれませんので、参考にしていただければと思います。



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