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ストーリージャンルの研究2 テレビドラマでのミステリー、サスペンスを考える

こんにちは。サロンの吉野です。
ストーリージャンルの研究の2回目になります。
今回は、日本のテレビドラマにおけるミステリー、サスペンスドラマについて、私なりの考えでお話していきたいと思います。
テレビドラマに限定させていただいた理由は、映画とは異なるテレビドラマ特有の広告、宣伝活動がミステリーやサスペンスというジャンルに様々な問題を起こしているのではないかということをお伝えしたいからです。
直接的にシナリオコンクールとは関連はないかもしれませんが、ネタにミステリー要素のあるものをお考えになっている方には、多少参考になるかと思います。


元々は犯人探しが主流だったミステリー
戦前まで、日本のミステリー小説は、殺人などの犯行を行った者は誰なのか?という、いわゆる『犯人探し』のストーリーが主流になっていました。
そして、小説では非常に頭脳明晰な探偵が登場して、難解な犯罪を暴いていくという内容です。
ご存知、明智小五郎金田一耕助などの名探偵シリーズです。
これらを本格派探偵小説と呼んでいます。


戦後になってからは、探偵小説の流れも少しずつ変わっていき、超人的な能力を持った探偵だけではなく、読者目線、つまり庶民感覚を持った探偵も現れるようになってきます。
それらは、昭和30年代にブームになった松本清張の小説などに見てとれるようになりました。


松本清張という作家が注目されたのは、事件を追う探偵の質を変えただけではなく、扱う事件及びプロットの流れに大きな変革をもたらしたからです。
今まで主流だった『犯人探し』のストーリー展開ではなく、アリバイ崩し、いわゆる『倒叙(法)』と呼ばれるものの登場です。
元々海外では、1920年クロフツというイギリスの作家が書いた『樽』などのアリバイ崩しものがあり、日本でも一部の作家が試みましたが、中々浸透していかず、昭和30年代の松本清張鮎川哲也らの作家の出現まで待たなければなりませんでした。
松本清張は、事件(主に殺人)の犯人が誰なのかというよりも、何故事件が起こってしまったのか?という犯人の「動機」に着目していったのです。
そして、その動機が個人的なものだけではなく、社会に起因するものがあるということで、彼の発表する作品を『社会派推理小説』と呼ぶようになりました。
以後の探偵小説、推理小説は、書く作家の志向によって、本格派、社会派など、様々なものが並ぶようになり、現在に至っています。


日本のテレビドラマにおけるミステリー、サスペンス
テレビドラマでミステリーやサスペンス仕立てのドラマが本格的に作られるようになったのは、いわゆる「2時間ドラマ」というものができてからでしょう。
日本テレビ系列の『火曜サスペンス劇場』なテレビ朝日系列の『土曜ワイド劇場』がその走りだと思います。
いずれも1970年代後半から80年代前半のことです。
その後、各局で2時間ドラマが作られるようになります。
西村京太郎、山村美沙、内田康夫らの人気作家を原作に使った相乗効果もあり、ミステリー、サスペンス仕立てのストーリー全盛時代を迎えることになります。
そして、各局ともにストーリー展開で一番多く使われるのは、『犯人探し』でした。
ただ、この『犯人探し』に、私はテレビドラマとしての大きな問題を感じていました。

 
テレビドラマで犯人探しが難しい理由
小説と違って、テレビドラマでミステリーを描く際には、登場人物を役者さんが演じなければなりません。
当然ながら、主人公である可能性が高い探偵役は、主役級の役者さんが演じます。
それと主人公である探偵の補佐役、いわゆる相棒ですね。
その副主人公に匹敵する人物も、それ相応の役者さんが演じるはずです。
そしてもう一人重要な人物がいます。 
それが犯人になります。
役どころでいうと、主人公、副主人公に次ぐ、三番手の人物です。
演じる役者さんも、必然的にそれ相応の知名度のある方になってしまいます。
私は2時間サスペンスドラマを観るにあたって、大きな発見をしました。
それは新聞のテレビ欄にあります。
その番組のテレビ欄には、必ずといってもよいくらい犯人役の俳優さんの名前は、三番目に記されているのです。
統計を取ったことがありませんが、かなり高い確率だと思います。
このことによって、私は2時間サスペンスドラマを観る気持ちが失せてしまいました。
観る前から犯人がほぼわかってしまっているからです。
これはミステリーファンからすれば大問題です。
それでも火曜サスペンス劇場でいうと、約20年間放送され、一時期は高い視聴率をとっていました。
しかし、1990年代に入ると、倒叙作品である海外ドラマ『刑事コロンボ』をオマージュしたような作品、『古畑任三郎』がフジテレビで放送されるようになり、犯人探しでは飽き足らないファン層を満足させました。
それに呼応するように、2000年代に入ると、2時間サスペンスドラマは、続々と打ち切られるようになったのです。


視聴者を舐めてはいけない
おそらく今後はテレビ局も、かつて2時間ドラマでしたような安易な失敗を繰り返すことはないかと思います。
視聴者のテレビドラマに対する意識も40年前とは大きく変わっているからです。
ただ、現在でも安易な番宣によって、観る気持ちを失ってしまうケースが多いのも事実です。
視聴者にとって視聴率は関係ありません。
とにかく面白い作品を観たいのです。
特にミステリー、サスペンス仕立ての話には、視聴者不在の番宣や安易な広告は必要ありません。
それがあることで、肝心の物語を楽しむ気持ちを、視聴者から奪ってしまうからです。


どうかスポンサーや芸能事務所に目を向けるだけではなく、視聴者を最優先にした番組作りを、今後とも各局にお願いしたいと思います。
このブログを読まれるコンクール応募者の方々も、ミステリーを書く際には、参考になるところがあると思いますので、頭に入れておいていただければと思います。



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