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キャラクター作りについて 履歴書とは?

こんにちは。サロンの吉野です
今回もキャラクター作りについてお話していきたいと思います。
今回は、前回も少しだけ触れましたキャラクター作りをするための「履歴書」に話題を絞って話を進めます。


キャラクター作りに必要な登場人物の履歴
シナリオ上のキャラクターを造形するための主人公を初めとする登場人物の履歴作りですので、就職などで提出する履歴書とは、性質が違うということを、まずはご理解してください。


キャラクター作りのための履歴書で必要なことは、

年齢(生年月日含む)、性別、国籍、
血液型、星座、性格、生い立ち、学歴、教養、趣味嗜好、これまでの経歴、経験、職業(歴含む)、癖、習慣、特技、長所、短所……


などなど、就職で使う履歴書とは比べられないくらいの、多岐に渡る個人情報を考えなければなりません。
フィクションとはいえ、一人の生きている人間を造らなければならないのですから、面倒臭い……と考える方もいるかと思いますが、立体的な人物像を創るためには、必要不可欠なことなのです。


履歴書作りの効能
ここでキャラクター作りのための履歴書が何故必要なのか?をお話したいと思います。
サロンのゼミではよく話していることなのですが、ある二人の作家さんが作られているキャラクター履歴書のことから述べます。


お一方は、天童荒太さんという小説家の方です。
『悼む人』で直木賞を受賞された天童さんは、私の知っている限り、小説に出てくる登場人物の履歴を、最も克明に作られている方だと思っています。
20数年前に大ベストセラーになった『永遠の仔』という作品についての、天童さんのインタビューを観たことがあります。
その時、天童さんはインタビュアーに対して、一冊の分厚い大学ノートを示して見せました。
「このノートに『永遠の仔』の登場人物キャラクターがすべて書かれていると……」
そのノートには手書きで、しかも虫眼鏡で見なければならないほどの小さな文字で、各登場人物のキャラクターの履歴が書かれていました。
中でも驚いたのは、主人公の職業を表す記述です。
主人公の一人に女性看護師がいるのですが、入院病棟を担当している彼女の担当患者全員のカルテが、克明に書かれているのです。
それらの患者は超長編ではありますが、小説では一回も登場してこない人物です。
それにも関わらず、天童さんは一人一人丁寧に造形されているのです。
天童さん曰く、Γゆうき(女性主人公の名前)は生きている人間なんだから、どういう生活をして、どう生きているのかを、作家はすべて知っていなければならない……」
観ていたは私は殴られたような衝撃を覚えました。
当時、私は脚本家を目指そうかどうしようかで悩んでいた時期だからです。
当然ですが、これは生半可なことでは作家になれないな……と正直思いました。


もうお一方は、ご存知倉本聰さんという脚本家の方です。
倉本さんは、ご自分の書かれるドラマに登場するキャラクターの履歴を、表現は悪いですが、トイレットペーパーのような巻き紙に記されているそうです。
トイレットペーパーと聞くだけでも、その長さからして、如何に一人の人物の履歴をしっかりと作られているかがわかります。
その効果がドラマの中に現れているのを、後に感じました。
北の国から92巣立ち』の中で、純くんが東京に一人で出てきて、ガソリンスタンドで働いている女の子を妊娠させてしまうエピソードがありました。
その後、女の子の伯父さんのところへ父親の五郎とともに謝罪にいくのですが、五郎は息子の不始末を叱るようなことは、全くありませんでした。
普通の父親ならば、Γお前、よそ様のお嬢さんになんてことをしたんだ!」と怒る場面です。
それなのに何故?
後に知ったことですが、五郎の巻き紙のような履歴書に、実は彼も若い頃、結婚前の女性を妊娠させてしまったことが書かれているのです。 
このことで私は合点がいきました。
Γそうか。五郎は純に昔の自分を見ているんだ……」
自分と同じ過ちを犯した息子ですので、紋切り型の説教などできるはずがありません。
ただひたすらに純と共に謝るしかないのです。
もちろん五郎にそんなエピソードあったなんてことは、20数年間放映され続けてきた『北の国から』の中では一切描かれていません。
私はこれがキャラクターの履歴を作るということなんだと、ただただ感心しただけでした。
この謝罪のシーンがあることで、どこにでもいるようなステレオタイプの父親像ではなく、Γ黒板五郎」というキャラクターが、きちんと確立されるのです。


皆さんも、天童さんや倉本さんほどの履歴書を作る必要はないにしても、履歴書を作る意味だけは、しっかりと掴んでいただきたいと思います。



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