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主人公は『巻き込まれ型』なのか? それとも『巻き込み型』なのか?  

こんにちは。サロンの吉野です。
昨日はゼミがありました。
まだ、締め切りまで4ヶ月近くあるのに、テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞に向けた発表が複数あり、相変わらず頼もしい限りだと思っています。
昨日の発表は、お題の一つ、「サスペンス」を想定したものが多い印象でした。
「サスペンス」については、以前の記事で色々述べましたが、今回は多く人に馴染みがあって、興行的にも大ヒットし、名作の一つに数えられるサスペンス作品2作についてお話したいと思います。
それと、サスペンス作品には、2つの主人公像があるということも、併せてお話していきたいと思います。


巻き込まれ型主人公の名作『ダイ・ハード
主人公が意に反して、とんでもない状況に陥り、嫌々ながらも事態の解決に向けて動いていく。
そんな"巻き込まれ型"の主人公が活躍する映画、『ダイ・ハード』をご紹介します。
妻と再会するために、日系企業ナカトミ商事が主催するクリスマスパーティーに出向いたニューヨーク市警のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、そのビルが複数のテロリストに乗っ取られたことを知ります。
マクレーンは、1人でオフィスにいたことで、人質になることから逃れましたが、複数の相手に対して、たった一人で闘うことは当然無理とみた彼は、ロス市警に通報を試みます。  
しかし、様々な手違いから通報は上手くいかず、意に反することですが、彼はたった一人で敵と闘うはめになってしまいます。
挙げ句に、闘っている男の妻がパーティー会場にいると知ったテロリストは、彼女の命をネタに、さらにマクレーンを追い詰めるのでした。
このように、初めからテロリストと闘う、しかも大人数と闘うことなど想定していなかったのに、状況がどんどん悪い方向へ行ってしまう……。
こうしたタイプの主人公を"巻き込まれ型"の主人公と、私は呼んでいます。
ダイ・ハード』の見所としては、たった一人で大勢のテロリストと闘う主人公の命はどうなってしまうのか……?
さらに主人公の妻が人質にいる……ということで、主人公、妻ともに命を奪われるのではないか……。
つまり、このような"巻き込まれ型"主人公の話では、他人の命を守ること以前に、主人公自らの命の危機を描いていくところに醍醐味があります。
それは次に例としてあげる『スピード』という映画の主人公像とは対極にあります。


犯人では無いのに、周囲の人たちの命を巻き込んでしまう『スピード』の主人公
犯人では無いのに、周囲の人たちの命を、ある意味翻弄させてしまう主人公がいます。 
ヤン・デ・ボン監督の『スピード』です。 
ロス市警のスワット隊員、ジャック・トラヴエン(キアヌ・リーブス)は、オフィスビルのエレベーターに仕掛けられた爆弾の除去に相棒と向かいます。 
そこで金と警察に対する恨みなど、異常な執着を持っている犯人と遭遇します。
その犯人は、さらに路線バスに爆弾を仕掛けます。
爆弾の仕掛けは、時速50マイル(80km)以下にスピードを落とすと爆発するものでした。
その仕掛けを知ったジャックは、自らバスに乗り込んで、爆発の危機を回避しようと奮闘するのでした。
主人公、ジャックはバスの乗客の命を守るために、様々な試練を乗り越えていくのですが、「サスペンス」としての危機を作っているのは、爆弾を仕掛けた犯人ではなく、実は主人公、ジャックその人なのです。
つまりこの主人公は、人の命を守るというストーリー上の使命の他に、映画を観ている観客をハラハラドキドキさせるという使命も、実は担っているのです。
このような主人公を"巻き込み型"の主人公と、私は呼んでいます。
普通のOLである女性(サンドラ・ブロック)に大型バスのハンドルを握られたり、完全に繋がっていない高速道路の上を、バスでジャンプしたりと、無理難題を課すのは、犯人ではなく、主人公、ジャックなのです。
このように、ストーリー上はヒーロー、正義の味方であっても、観客の「ハラハラドキドキ」、つまり「サスペンス」を煽っていくのは、主人公であるということがあります。


ただし、"巻き込まれ型"でも"巻き込み型"でも、最終的には主人公は主体的に事件に関わり、その解決を積極的に行っていく!という点では同じです。
一番ダメなのは、主人公がウジウジしているばかりで、全く動かないような展開の話です。


皆さんも、今回のテレ朝コンクールに限らず、「サスペンス」を書こうと思ったときは、このような主人公像の違いを考え、具体的に参考にしていただけると幸甚です。



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