シナリオを書き出す前に用意すべきこと
こんにちは。サロンの吉野です。
皆さんは、シナリオのコンクールを書き出す前に、事前に用意している「こと」や「もの」はありますか?
今日、述べたいと思っていることは、シナリオコンクールに限ったことではなく、物語を創ることそのもの、創作をすることそのものに、不可欠といえる重要な要素のお話なのです。
シナリオコンクールの話に戻します。
皆さんは、何か書きたいストーリーがあって、シナリオを書こうとしている方が、ほとんどではないかと思います。
サロンが推奨しています100文字ストーリーも、「誰と誰のこんな話」のようにログラインを打ち出すことで、具体的なストーリーの輪郭が描きやすくなる効果があるのです。
要するに、短くても簡単でも、ストーリーのアウトラインだけは考えていないと、先に進むことが難しいといえるのではないでしょうか。
ただ、皆さんのシナリオ執筆の工程を見ていると、どうも初めから考えているストーリーに縛られ過ぎてしまって、結局、何を言いたいのか、何を描きたかったか解らない作品になっているケースが非常に多いと思います。
そもそも皆さんが物語を書く意味とは何でしょうか?
おそらく多くの方は、何か訴えたい主張があって、それを物語という形で、世に発表したい思いで書くていくのだと思います。
その主張、思いのことを、一般的に『テーマ』と呼びます。
今日の記事のタイトルである「シナリオを書き出す前に用意すべきこと」の一つが、この『テーマ』になります。
とにかく具体的なストーリーや構成を考える前に、「わたしはどうして、この話を書こうとしているのか?」を、ご自分に問いかけてください。
『テーマ』も決まりました。ログラインもできました。それでは執筆……となる前に、もう一つ用意していただきたいものがあります。
それが『モチーフ』です。
皆さんは、モネという画家はご存知ですね。
モネは「睡蓮」をモチーフにした絵を多く描いています。
ここで『モチーフ』という言葉が出てきました。
よく『テーマ』と『モチーフ』を混同した使い方をされる方がいらっしゃいますが、『モチーフ』とは、その作品を書く動機になった「こと」や「もの」のことを指すのが一般的だと思います。
例えば、母と娘の深い絆を描くのが作者の『
テーマ』だとしたら、その物語を描くのに相応しい「こと」や「もの」を見つけるのが、『モチーフ』を探すということなのです。。
仮にモネの『テーマ』が「光と影の色彩美を描描くこと』だとしたら、「睡蓮」という植物はモネの『テーマ』に相応しい『モチーフ』になるのです。
もちろんモネは、「睡蓮」以外の『モチーフ』を使った絵もたくさん描いています。
実は一人の作家が描きたいと思う『テーマ』は、そんなに多くはない、一つだけということもあります。
シナリオの巨匠と呼ばれる向田邦子さん、山田太一さん、倉本聰さんも、テーマの数は限られていると思います。
その『テーマ』を、時代時代に合った『モチーフ』を使って、新しい作品を創られたのだと思います。
皆さんも、シナリオコンクールを書き出す前に、具体的なストーリーを作る前に、この作品で何を訴えたいのかという『テーマ』を持ち、その『テーマ』を描くのに相応しい『モチーフ』を見つけることから始めていただきたいと思います。