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シナリオの勉強法8 硬直化したセリフとト書きの改善

こんにちは。サロンの吉野です。
今回は、シナリオを形作る上での根幹部分であるセリフとト書きについてお話していきたいと思います。


これまでに私は、2000本以上のコンクール応募作品を読んできましたが、その中の多くの作品に共通するミスがあります。
それは、シナリオを形作る上での根幹に当たるセリフとト書きにおけるミスです。
厳密に言えば、「ミス」という表現には当たらず、むしろ「稚拙」呼んだ方が正しいのかもしれません。
このことについては、前回の記事で述べたコンクール審査にも関わることなので、思い当たる方は、是非参考にしていただければと思います。


味わいのないセリフ、ト書き
多くの皆さんの作品を拝読して感じることは、「なんて味のないセリフやト書きを書くのだろう……」ということです。
その原因の一つは、皆さんの決定的な勉強不足にあります。
以前の記事でも記しましたが、皆さん、シナリオを勉強しているにも関わらず、肝心のシナリオをあまり読んでいないのです。
コンクール受賞作品は、熱心に読んでいる様子は見てとれるのですが、古今東西の名作映画、あるいは名作ドラマのシナリオを買って読もうとされる方は、残念ながら少ないというのが現状です。
名作に絞らずとも、せめてご自分がシナリオを目指されたきっかけになった作品のシナリオぐらいは読んでいただきたいのです。
そして、シナリオを読んでいない弊害が最も顕著に表れるのが、セリフとト書きです。


情緒のないセリフ、芝居になっていないセリフ
このブログを読まれている方のほとんどの人は、シナリオ学校でシナリオの基礎を学んでこられた方です。
私も2つの学校でシナリオを学んできました。
それぞれの学校には、それぞれの教え方があって、セリフやト書きの表記も、学校によって微妙に違います。
例えば、ある学校ではト書きは、上から3マス落としと教えますが、別の学校では2マス落としで教えます。
シーンナンバーの表記の仕方も学校によって、呼び方も書き方も違ってきます。
要するに、どういうことを言いたいのかと申しますと、皆さん、あまりにもその習った学校のいわゆる「書式」にとらわれてしまって、肝心の人の心を揺さぶったり、感動させたり、泣かせたり笑わせらたりといった、シナリオの本来の目的である芝居を書くということを忘れてしまっているのです。
各学校は、これならば誰が見ても読みやすい!という思いで、書式を作っています。
それ自体はもちろん間違っていません。
問題なのでは、形ばかりにとらわれてしまって、何が本来の目的なのかを見失っている皆さんの方にあるのです。


セリフでの悪い例からお話します。
これも以前の記事で述べたのですが、『セリフは短く!』という学校の教えを忠実に守って、結果、何が言いたいのかわからないセリフになっているものがあります。
確かに一つひとつのセリフは短めの方が、テンポとリズム感があって、良いのは間違いありません。
ただ、時と場所によります。
怒り心頭の人が、その怒りを爆発させるシーンで、短いセリフ一つ吐いたくらいで、怒りが収まりますか?
当然、そういうシチュエーションでは、その人に長いセリフを用意しなければなりません。
もちろん無言で怒りを現す人もいますので、これも臨機応変です。
それと、こちらも以前にお話しましたが、セリフの中に、いわゆる「……」を入れるのを、極端に嫌う方がいらっしゃいます。
「……」は、芝居を書く上で、極めて必要なアイテムです。
もちろん乱用はダメです。
これも臨機応変になります。
「……」の効用の具体例につきましては、以前の記事、「シナリオの勉強法」で述べておりますので、参考にしていただきたいと思います。


たまには規則破りをしても良いト書き
ト書きにつきましても、学校で習ったことを忠実に守って、結果、味も素っ気もないものなっている作品が多くなっています。
確かに、ト書きに余計なこと、ものを書いてはいけない!というのは正しいことです。
例えば、登場人物の心情を、ト書きに書いていけないというのは、シナリオの基礎を勉強する上で、当然の教えです。
小説などの主観的な表現を重視するものと比べて、シナリオはあくまでも客観的な表現に終始していく分野だからです。
ただ、それに凝り固まってしまい、シナリオ全体が無味乾燥なものなってしまうのは、もっといけないことだと、私は思います。


例えば、私はこんなト書きをコンクールに出す原稿に書いたことがあります。

『……四人、それぞれの思いの中にいる。』
家族三人ともう一人、四人が庭で花火をしているクライマックスシーンでのト書きなのですが、これまでの四人それぞれの思いを描く無言のシーンで、絶対に必要な描写だと思ったからです。
はっきり言って、掟やぶりです。
しかし、私は自分で言うのもなんなんですが、とても情緒があって、良いシーンの描写だと思っています。
それはコンクールの結果でも証明されました。


今回の総括として、学校で基礎を習うのは大事だけれども、それに凝り固まってしまって、基礎から応用に入らない方が、非常に多いというのが、残念だということです。
そして、その原因はシナリオを読む!という、シナリオライターを目指す方なら当然の勉強をしてこなかったことによるものだと、私は思うのです。



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