シナリオコンクール対策の創作交流サークル「サロン」

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モチーフからテーマを導き出すのか、それともテーマに沿ってモチーフを見つけるのか?

こんにちは。サロンの吉野です。
今回も、前回に引き続き、テーマとモチーフについてお話していきたいと思います。


タイトルにしました『モチーフからテーマを導き出すのか、それともテーマに沿ったモチーフを見つけるのか?』という命題ですが、結論から先にお話してしまいますと、私はどちらからでも良いと思っています。
今回は、過去に私がコンクールの発想をする際に、上記両方の方法を採用したことがありましたので、大変僭越ですが、経験談も交えてお話していきたいと思います。


先に強烈なモチーフが見つかった場合
私がコンクールに応募している頃ですので、今から15、6年前の話になります。
それは2003年の冬から春。受験シーズンに起こった出来事でした。
新聞の朝刊の三面記事に小さな囲み記事が載っていました。
「JR京葉線で受験生を降ろすため電車が臨時停車する」
正確ではないかと思いますが、そんな見出しだったと思います。
要するにどういう出来事かと言いますと、高校受験する女子中学生が、試験会場である高校の最寄り駅を通過してしまう通勤快速に間違って乗ってしまい、泣いている女子中学生を見かねた乗客たちが車掌に相談し、車掌は車掌区に連絡許可を得て、電車を停まらないはずの駅に臨時停車させた、という話です。


当時、新聞だけではなく、ワイドショーなどにも取り上げられて、大筋として、「日本もまだまだ捨てたもんじゃないな」的ないわゆる"美談"としての扱いを受けていました。


ただ、私はこの出来事が何故か引っ掛かって仕方がありませんでした。
当時は今ほどインターネットやSNSなどが普及していませんでしたが、それでも「そんなことをして、もしも電車に遅れが出たらどうするんだ」などの否定的な意見も出てはいました。
しかし、私が引っ掛かったのは、この出来事の中に潜む「公平」とか「不平等」というキーワードです。


私の心の中から離れない、この圧倒的で強烈な『臨時停車』という「モチーフ」を使って、何か描くことができないのだろうか、と模索を始めました。
結果、臨時停車した同じ電車に乗っていて、同じように間違え、降りるべき駅で降りられなかった別の女子中学生を主人公にし、降りることができた女子中学生に復讐まがいのことをする、という話にしました。
このケースは、まさにモチーフから始まり、ストーリーの内容や、テーマを導くことに繋がった、私の中では典型といえるものです。


姉妹の絆というテーマに相応しいモチーフは?
次はテーマらしいものが先にあって、そのテーマに相応しいモチーフを見つける点についてお話します。
以前の記事で、コンクールを受賞する習慣について述べているものがありますが、その習慣の中で、「変わった組み合わせの二人組がいたら、その二人の関係を想像してみる」という項目があったのを覚えいらっしゃいますでしょうか?
そして実際に私は、体型の全く違う姉妹を発見し、その二人の半生を想像して、一つの作品にしたことがありました。
その完成までの進捗状況で、二人のキャラクターやストーリー展開は大方できていたのですが、二人を結びつけていた絆の象徴、つまりこの作品の「モチーフ」が全く決っていなかったのです。
悩んだ挙げ句、私が見つけたのは、作品のタイトルにもなった『おでんの玉子』というモチーフです。
幼い頃、父親が病死して、母親は男と駆け落ちしてしまい、二人の姉妹だけの生活になったとき、まず二人が常に食べているものに考えが及びました。
10歳年の離れた姉妹、妹を育てるために深夜まで働いている姉、その姉を家で待っている小学生の妹……。
その二人が、二人っきりだった頃の思い出を、何年経ったとしても共有できるような象徴的な食べ物とは……?
私はおでん、その中でも味が沁みていくほど、味わい深くなる玉子を、その対象に考えました。
大根ではなく、玉子です。
ようは語感の問題です。いつでも温めれば食べられて、保存が効きやすいおでんの玉子……。

私個人の例を引き合いに出しまして、恐縮なのですが、幸いにして、『臨時停車』も『おでんの玉子』(両方とも作品のタイトルになりました)も、受賞という恩恵を賜ることができました。
これらの例が、皆さんの参考になれば、これほど嬉しいことはありません。



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